視力検査でおなじみの「C」ランドルト環を徹底解説!
「C」といえば何をイメージしますか?
眼科でCといえば、視力検査で活躍中のCマーク。
片目でじっと見つめたCマークはランドルト環といい、約100年の歴史があります。
そもそも、どうしてCなのでしょうか?
今回は、謎の深まるランドルト環について見てみましょう。
ランドルト環の開発者はランドルト先生
ランドルト環は、エドマンド・ランドルト(Edmund Landolt)というスイス人の眼科医でフランスに移住後、ランドルト環を開発しました。
ランドルト環はイタリアで開かれた、国際眼科学会で標準指標として正式に採用されている形です。
じつはCではない?!ランドルト環
誰もがこの形から想像するのは、アルファベットのC。
ですが、ランドルト環というように、「環」つまりもとの形は円です。
そこに切れ目が入るので、Cに見えるんですね。
では、なぜこの形になったのでしょうか?
受け入れやすい形「C」
約100年前ランドルト環の他にも、オランダ人の眼科学者のハーマン・スネレン(Herman Snellen)によって1862年にアルファベットを用いた視力測定法が生み出されています。
この視力検査法は「スネレン視標」と呼ばれ、現代では欧米で主に採用されています。
ですが、当時アルファベットが使われない国では、スネレン視標では視力検査の結果に偏りができる欠点がありました。
そこで、ランドルト氏によって円に切れ目を入れた、「ランドルト環」が生み出されました。
日本でもランドルト環が輸入され、そのまま定着しました。
一見、誰でも描けそうなランドルト環ですが、視力を正確に検査するために形は厳密に定められています。
杓子定規なCマーク
マークの比率はきっちり5:1:1
ランドルト環の比率は、円環全体の直径:円弧の幅:輪の開いている幅=5:1:1と決まっています。
なぜ、こんな対比になっているのでしょうか。
それは、見ている対象の大きさを把握する、という目の機能がポイントです。
視角とCの切れ目
視角というのは、視線の角度のことです。
見ている対象の横幅(左右)、高さ(上下)を目測した時に、目の中心を始まりとして視線は対象の横幅(左右)、高さ(上下)を結ぶ2直線ができると考えます。
その2直線の左右・上下の間にできる幅の大きさを、視角と呼び、角度で表されます。
視角の単位は1分(ぷん)といい、角度1度の60分の1です。
5m離れて1分の幅(角度)を確認できる、目の機能のレベルを視力1.0と評価します。
この距離も、視力1.0のときのランドルト環の大きさも、決まっています。
検査は「5分1分角の原理」に基づく
「5分1分角の原理」とは、「文字や形を視標として用いて、各部の太さや間隔を視角1分、その全体を視角5分としたとき、正常な眼はこれを見分けることができる」いう難しそうな原理です。
視力1.0の基準や、ランドルト環の開発、視力検査の方法も、この原理に基づいています。
ですから、ランドルト環の直径・線の幅・切れ目は5:1:1となっているのです。
また、実際の視力検査では、目の水晶体が働かない距離が望ましいため、検査距離は5mと定められました。
視力1.0の基準となるランドルト環の大きさ
ランドルト環で視力検査をする際、視力1.0の基準となるランドルト環の大きさは、日本ではJIS規格で定められていますが、国際規格(ISO)ではもう少し正確です。
- 日本ではJIS規格:ランドルト環の直径7.5mm:線の幅1.5mm:切れ目1.5mm
- 国際規格(ISO):ランドルト環の直径7.272…mm:線の幅1.4544…mm:切れ目1.4544…mm
日本規格と国際規格には多少違いはありますが、基本的に考え方は同じです。
切れ目を5m離れた距離から、1分を確認できる視力を1.0の基準としています。
視力1.0の目の能力とは?
数字と理論ばかりではよくわかりませんよね。
簡単にまとめてしまうと、視力1.0とは5m離れて1.5mmの切れ目が上下左右のどこにあるのか確認できる能力、ということです。
ランドルト環の切れ目を求める式
ランドルト環の切れ目の大きさを求めるには以下のように計算します。
視力2.0の場合を例にして計算してみましょう。
式 ランドルト環の切れ目の大きさ=1分÷視力×5m
例 約0.75mm=1÷2.0×5
視力が2.0だと5m離れて0.75mmの大きさを確認できる、ということになります。
視力2.0の方は、ぜひその視力を保持してくださいね。
視力検査表はランドルト環が小さくなっていきます。
もし逆だったら検査中、行ったり来たりで大変です。
視る力にはいろいろある?!
視力や検査方法は5m離れて検査表を見るだけではありません。
遠見視力
もっとも基本となる視力検査です。
片目を隠し5m離れて検査をします。
これを遠見視力といいます。
最近では視力をアルファベットで表すことも多くなりました。
- A:1.0以上・・・正常、正視
- B:0.7~0.9・・・仮性近視
- C:0.3~0.6・・・仮性近視
- D:0.2以下・・・近視
近見視力
30cmの近距離での視力を近見視力といいます。
中心視力
対象をしっかり網膜の「中心窩(ちゅうしんか)」でとらえられる視力が中心視力です。
視力検査というと中心視力を検査しています。
中心外視力
中心以外のぼんやりと見える部分は中心外視力といいます。
中心窩以外で対象をはっきり見るのは、難しいといわれます。
裸眼視力
コンタクトやメガネを使用しない状態の視力のことです。
矯正視力
コンタクトやメガネを使用した視力です。
物を見るということは、とても大切な機能です。
眼球機能に異常がない、視神経を通して正しくその情報が脳に行って初めて異常なし、といえます。
子供の視力異常は、発見が遅れがちです。
集中力がないなどは、近見視力が弱いかもしれません
子供の様子が変だと感じたら、眼科で検査をしてもらいましょう。
レンズの度数とは?
メガネやコンタクトを作ると「度数」という言葉が使われます。
これは、何を表しているのでしょうか?
「度数」はレンズやコンタクトの基準値
「度数」とは「ディオプトリー」と呼ばれるレンズの屈折率をインチで表したものです。
ディオプトリーは「D」と書かれることが大半です。
+は凸レンズ(遠視用)、-は凹レンズ(近視用)を指し、値が大きいほど視力が悪くなります。
世界の視力検査表
世界で一番使われている視力検査表は、ランドルト環かといえば、そういうわけでもありません。
欧米ではスネレン視標
ヨーロッパやアメリカでは、スネレン指標が多く採用されています。
アルファベットを使う国々では、cが検査しやすかったんですね。
中国では「E」の文字のEチャート
中国では「E」のみを使用したEチャート方式が大半です。
Eチャートとは、Eが Ш、ヨのように、上下左右に向きと大きさを変えられた検査表です。
ランドルト環以外の日本の視力検査表
日本には、ランドルト環以外で、主に3つの視力検査表があります。
- 石原式:カタカナ
- 大島式:ひらがな
- 山地式:二匹の魚(双魚視標)
なんとなく思い出された方も多いのではないでしょうか?
視力検査といっても、様々な種類がありますね。
実はランドルト環検査表は形、大きさ、数がJIS規格に則られていれば、基本的に自由に作成されています。
似たような検査表でも微妙に違います。
まとめ
身近すぎて気に留めることもないランドルト環ですが、歴史と科学的な根拠がありました。
医療現場で使われるものは、しっかりした根拠が裏にあるものです。
目はかけがえのない機能です。
目の負担が大きい現代ですから、大切にしてあげましょう。